毎日洋服を選ぶのが面倒だと思う。
それはお洒落さんならば、ある程度はお洋服の組み合わせを考えるのも楽しいだろうけど、しかし凡人な此方として朝の時間割の中では逸早く省くべき部分なのだ。
人間は、毎日デートに臨むような気合いの入れ方が出来るようにはなっていないので、日々コーディネートを考えるだけで、疲労困憊、満身創痍、精疲力尽。
本当に面倒になってしまうと外出自体やめてしまうし、今もコーディネートという言葉の長さにうんざりしている。
そんな話を知人にしたところ、WEARというアプリを勧められた。
話を聞いてみると、どうやら、おしゃれ自慢達がそれぞれのセンスを武器に殴り合う場所らしい。
野蛮なアプリである。
まあ、折角の好意を無駄にすることもないので、実際にインストールしてみた。
すると、アプリを開いた途端、画面いっぱいにコーディネートが並んでいて目眩がした。
そういうことじゃない。
此方は、もうそのたくさんのコーディネートの中からひとつ選ぶのも面倒臭いのだ。
世の中はナマケモノたちの思考を全然分かってなかった。
今度のデートの時には充分に参考にさせてもらうけど。
もっと上手い方法がないだろうか、ともう一度、朝の洋服選びを放棄し、ZIPを視界に入れながら頭を捻ってみると思い出したことがある。
佐藤オオキというデザイナーが居る。
彼は同じシャツを何着も持っていて、毎日同じ格好をするらしい。
なるほど、それならばその真似をしようと、白いシャツを何着も買ってみた。
今度はシャツのボタンを閉めるのが億劫になった。
なんという業の深さ、ナマケモノ精神。
そんな折に、知人達とアプリを考える機会があった。
確か、アプリ開発の会社で働いてる知人との会話の中で流れた話題だったと思う。
多分もうその会社は辞めてしまっただろうけれど。
あの人も中々に業が深いナマケモノ仲間だ。
そんなナマケモノたちが集って、ナマケモノたちによるナマケモノたちへのアプリを考える。
ならばもういっそのことアプリに全て決めて貰ったらどうだろうかという話になった。
服の色すら選ぶのも面倒臭い、色彩センスなんて光ってないナマケモノたちのために。
携帯の現在地から気温℃、気圧pH、湿度%、風速m/s、等を読み取ってその日の色の組み合わせを決めてしまおう。
そうしてくれたらきっとナマケモノたちはその通りに生きる。
まさにこれが世界で流行したら、毎日、世界が同じ色で征服されるのだ。
朝の通勤、同じ色を纏った人間たちが一斉に電車を待っている想像に、ウミイグアナの日光浴をイメージさせられた。
なんだかとても愉快だ。
たまには違う銘柄の煙草が美味く感じる。